師匠は一軒家を2棟所持しており、東京には倉庫としてアパートを一棟借りています。
セコムと契約したり、固定資産税や家賃を払ったり、住んでもいない家の破裂した水道管を直したりと、僕からしたら罰ゲームのような日々なので、羨ましいと思ったことはこれっぽっちもありませんでした。
たくさん抱えるから支払いが嵩むのであって、そのために日々追い立てられるよう働くのだとすれば、それは不幸せだと思います。
どのくらいのお金があれば無理なく食べていけるのか、自分はどんなこと(とき)に幸せを感じるのか、そんな些細なことだけでも理解していれば、もっと余裕を持って生きていくことが出来ると思っています。
しかし僕が師匠に向かってそんなことを言えるはずもないので、何か手伝って欲しいと頼まれたら、大概のことは請け負ってしまうのです。
そして今回のお手伝いは、前述した東京のアパートを引き払うことになったので、その片付けということでした。
およそ25年間も借り続けたアパートですが、もう古くなったので取り壊すというのです。
簡単に言えば師匠は立ち退きを要求されているのですが、これまでにトータルで5千万円ほど支払ってきた師匠からすると、『だったら引越し代(という名の立ち退き料?)くらいは払って欲しい!』となるようで、また、敷地内では野良猫の世話でボランティアの方々が出入りをしており、そのことでも大家さんとトラブルに発展しているそうで、実は長い間泥沼状態が続いていたそうなのです。
詳しことは聞きませんでしたが、最終的には第三者を間に入れ、お互いに納得のいくところに着地させたのだそうです。
アパートはもう長い間使っていなかったということなので、ここ数年間は毎年、サラリーマンを一人無駄に雇用していたようなものなのだなと頭の中で計算していました。
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アパートの一角に植わっていた雑木。
枝の一部が青々しいところが気持ち悪かったです。
師匠はこれまでにも一人でアパートの片付けをしていたそうなのですが、中には石仏や道祖神、石灯籠なども無造作に置いてあるので、それらを運ぶだけでも汗だくになってしまいました。※石物はものすごく重たい。
無口になってしまうほど最悪な仕事だったので、さすがに師匠も申し訳ないと思ったのか、この日は帰りに色々とお土産を買ってくれました。
もしかしたら、道中話題になった「ケチな人論」が功を奏したのかもしれないし、はたまた、単純に師匠は大家さんから立ち退き料をたくさんせしめたのかもしれません…。
この日は朝から嫌な予感がしていたので、せめて朝ごはんだけでも(師匠のおごりで)豪華にいこうと決めていました。
最初に立ち寄ったコンビニで、師匠が何でもカゴに入れていいというのを待ち、普段自分では買わない900mlのポカリスエットや、フィレオフィッシュ、ちょっと高級なパンや飴などを入れていたのですが、本番は仕事が終わってからでした。
アパートの近くにある個人経営の魚屋さんは、珍しく天然魚だけを扱うお店ということで、師匠の行きつけだったのだそうです。
そこで幾つか注文をすると、用意するまでに30分ほどかかるといわれました。
僕は乾いた汗が気持ち悪かったので、『早く帰りたいな…』とは思いましたが、仕方がないので近くを観光して待つことにしました。
ここは池田屋というくず餅のお店です。
さっそく2~3人前のくず餅を一つ、お土産として買ってもらいました。
池田屋の隣には、いかにも歴史のありそうな酒屋さんがありました。
酒屋さんでは甘酒を買ってもらったのですが、これが抜群に美味しかったのでオススメします。
池上本門寺を見て回った辺りで約束の時間になったので、魚を受け取りにいきました。
帰りしなに食べようと、最後は15時のオープンを待ち、たこ焼きを買ってから帰りました。
・帰宅後…。
半分くらいは期待していたのですが、天然のインドマグロ(中トロ)やヒラメは僕の分もありました。
長野にある「角上」という魚屋の本マグロも美味しかったのですが、この日のインドマグロ(ミナミマグロ)も格別でした。
池田屋のくず餅も、子供の頃によく食べた味だったので懐かしさもあって美味しかったです。
色々と考えましたが、やはり師匠は大家さんから立ち退き料をたくさん貰ったのだと思います。
ちょっと得した気になっているのだとしたら大変なので、師匠にはこれまでに支払ってきた25年分の家賃の計算や、実質アパートが不必要になってからの年数のことなどを思い出して欲しいと思います。
・おまけ
片付けの日の朝、師匠に買ってもらったフリスクです。
プラケースに入った旧型は買ったことがありましたが、このタイプは初めて買いました。
タブレットとして純粋に美味しかったこともありますが、何よりも片手で開けしめ出来るこの新容器がとても気に入りました。
蓋の開け締めだけで気分が良くなるのはすごいと思います。
おしまい。