[Diary:486]
ある日の夕方、少し興奮気味の師匠から、電話がかかってきました。
都内での買い取りが入ったから一緒に来てくれという内容だったのですが、どうもその買い取り先が、とある業界の大家であったらしく、これは大きな仕事になるはずだと師匠は静かに燃えていました。
今回の物件は、東京都内にある瓦屋根の日本家屋で、それ自体が丸々金庫になっている部屋が2つと、それ以外にも小さな金庫がそこら中に置かれているようなお宅でした。
廊下には赤絨毯が敷き詰められ、お茶室があったり、離れには資料館があったりしました。
こんな家にはこれまで入ったことがなかったし、とても個人宅とは思えないくらいの豪奢な雰囲気に、気持ちは昂ぶりました。
自宅に帰ってからインターネットで調べたところ、今回伺ったお宅の主は非常に著名な方であることが分かりました。
このブログは師匠には内緒にしていることもあり、万が一にも迷惑を掛けるわけにはいきません。そのためこの物件の写真は、これまで以上に厳選し、詳しく書けるところも敢えてぼやかして書くことになりそうです。許してください。
1日目
東京でサラリーマンをしていた時と同じ、早朝の5:30にアラームで目を覚ましました。
東京までは高速を使って行くので、この日は師匠のハイエース(新車)に同乗させていただくことになっています。
久しぶりの橙(ダイダイ)
指定された時間に師匠のお宅へ到着すると、まだ出かける支度が出来ていない様子の師匠から、橙の散歩を頼まれました。
初めて師匠の車に乗りました。
新車に変わってまだ一ヶ月も経っていないはずなのですが、ダッシュボードの上には書類が山積みになっていました…。
高速を使えば、東京に入るまで1時間くらいです。
しかし東京も広いので、目当てのお宅までは2時間半ほど掛かりました。
都内では路駐をするとすぐに違反切符を切られてしまうので、(高額な)コインパーキングを利用します。
驚きの豪邸でしたが、移築する一部を除き、あと数日後には解体されてしまうようです。
僕ら買取業者と平行して、解体業者も作業を始めていました。
師匠が骨董や書籍に夢中になっているのと同じように、僕は1975製のワインに夢中になっていました。
この物件のお手伝いをして発生する予定のお駄賃代わりは、このワインを頼んでみようと思っています。
普段炭を使っていない人には見分けが難しいと思いますが、この炭は非常に高級なものです。
ワインとこの炭ももらえたら良いなと、早くも物欲が噴出してきました。
いつもだったら、師匠が指定したものをダンボール詰めし、ハイエースの荷台まで運び、崩れないように積み込むというのが僕に与えられた仕事です。
しかし今日は、荷物をどこかの部屋にまとめておくだけで、まだ持ち出すことは出来ませんでした。
良くわからないのですが、依頼主からそのように指示されているのだそうです。
いよいよ大きな金庫の中にも入りました。
書籍や掛け軸、その他焼き物などが出てくれば凄いと思うのですが、しかしそれらは師匠の仕事です。
僕は個人的に、棚や窓などに興奮していました。
帰りの車中では、今日見てきたものの話で盛り上がり、また、価値があるのかどうかわからないものをインターネットで調べておこうというような話をしていたら、あっという間に山梨県に到着していました。
実はこの時、師匠のハイエースには、後日売りに行く予定の荷物で一杯でした。
この買い取りのためにわざわざ荷物を下ろすのは大変なので、急遽レンタカーを借りることになりました。
そして次は僕が運転するという話をしていたので、ついでにレンタカーも僕が借りに行くことになりました。
いつもは軽自動車のジムニーに乗っているので、久しぶりのハイエースで高速を走るというのは少し不安なのですが、こういうものは慣れだと思っているので、頑張ってこようと思います。
※インターネットでハイエースをレンタルしました。
おまけ
パーキングで師匠にソフトクリームを買ってもらいました。
師匠も同じものを注文し、そのままソフトクリームを片手に持ち、舐めながら運転をしていたのですが、気がつくとハンドルを握る手は溶けたアイスでベトベトになっていました。
あの美しかった新車がみるみる汚れていくのはちょっと悲しかったので、僕はウエットティッシュをそっと師匠に差し出しました…。
おしまい。