[悶絶!]エッフェル塔が立つほどの痛さ(2/2)

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明くる日も歯痛は健在で、かなりの寝不足であるはずなのにそのことを感じさせてもくれませんでした。

本気でヤバいと思う痛みに襲われたときは、お金のかかる病院に行くかどうかを悩むこともないのだと分かりました。

 

移住してからというもの、僕は何度か痛い目を見てきました。

尾てい骨や肋骨を痛めた時は、『もしかしたら骨にヒビが入っているかもしれない…』と不安になるくらい痛かったのですが、それでも病院に行こうとは思いませんでした。

小屋暮らしの怪我について|タイニーハウスピリオディカルズ





しかし僕が今感じている歯の痛みは、もう居ても立ってもいられないレベルの痛みで、少なくとも夜に眠ることが出来ないくらいの痛みなのです。

聞いた話によると、アメリカでは歯の治療に1000~2000ドルもかかるそうです。

当然支払えない人も多いので、痛む歯を「えい!」と自分で抜いてしまうことも珍しくないようです。

僕は死ぬまで20本の歯と1.0以上の視力を保持することを目標にしているので、痛むけど特にグラついている訳でもない歯を抜いてしまおうとは思えませんでした。

 

以前歯のクリーニングでお世話になった歯医者に治療の予約を入れようと電話すると、受付の女性に、「今も歯は痛みますか?」と聞かれたので、「とても痛みます。夜も眠れないくらいに痛いです!」と元気よく?答えました。

しかし僕の思い虚しく女性は、「今日は予約で一杯ですね」と言いました。

僕はこの歯の痛みを死活問題だととらえているので、「何とかなりませんか?お願いします!」と泣きつきました。

年甲斐もなく泣きついたお陰で、長時間待つことになるかもしれないという条件で本日の診察を受け入れてもらうことが叶いました。

 

 

一度歯医者の入っているビルの下で歯が痛みだしてしまったので、人前であることなどお構いなしに頬を押さえしゃがみ込み、小さく悶絶してしまいました。

 

痛みの間隙を縫って受付を済ませると、いつ呼ばれるか分からない時を待合室で待つことになりました。

本棚に並べられていたマンガ本で僕が気になったのは、浦沢直樹の「Pluto※プルートウ」、冨樫義博の「レベルE」だったのですが、歯が痛みだすような過激な物は避けるべきだと思ったので、あずまきよひこの「よつばと」を手に取りました。

 

 

よつばがパンを砂で作ろうとしていたり、夜中に目を覚まし、家の中のあらゆるものがお化けに見えて怯えたりしていましたが、歯の痛みで物語に集中出来ず、上滑りを繰り返していました。

全然おもしろくないと投げ出しそうになったころ、(思っていたよりもずっと早く)僕の名前が呼ばれました。

 

『助かった!』

よつばとを投げるように本棚に戻すと、診察室に駆け込みました。

しかし助手の方の問診や探針による触診、レントゲン撮影をするばかりで、なかなか治療には入りませんでした。

ずっと両隣のお爺ちゃん、お婆ちゃんと先生との会話を聞きながら待っていると、ようやく僕の番が回ってきました。

先生は撮ったばかりのレントゲン写真をみて言いました。

「多分銀歯の中で虫歯が進行しているのだと思います」

“多分”というのは、外からやレントゲン写真を見ただけでは虫歯を見つけることが出来なかったということのようです。

怪しい歯に被っている銀歯を剥がす為には歯を削る必要があるようで、まずは麻酔を打つことになりました。

そもそもこの銀歯は、僕がまだ小学生だったころ、笑気ガス(当時はまだ珍しかった?)を吸わされ治療した時に被せられたものです。

今頃になって銀歯の中の虫歯が目を覚ましたのか、それとも銀歯を被せていても虫歯菌は難なく侵入することが出来るのか、もしかしたら被せていた銀歯が劣化したのだろうか…?

分からないことだらけですが、何にせよ僕はまな板の鯉状態なので、全てを先生に委ねるしかありません。

「歯が硬いですね…」

麻酔を打とうとしていた先生は苦戦をしているようでした。

僕からすれば、歯茎ではなく歯に麻酔を打つということに驚いていました。

歯に入っていかない麻酔薬は喉の奥に流れていくばかりで、僕は言われるがまま、何度も何度もうがいをしました。

外側、内側からと工夫しながら何とか麻酔を打つと、またしばらく待っているようにと指示されました。

戻ってきた先生は、まるでアーク溶接をするようなお面(透明だけど)をつけて、手にはドリルの装着されたルーターを持っていました。

これからのことを想像すると不安になってきたので、慌てて麻酔を打った歯の周りを爪で突き、痛みがないことを再確認しました。

銀歯を剥がした中にはセメントが注入されていたようで、先生は「もう少し、もう少し…」と言いながら僕の歯ないしセメントを削っていきました。

歯の穴が大きくなるにつれ、神経に触れるような堪らない痛みに襲われるようになってきました。

胸の前で祈るように組んでいた両手と足の指先が連動し、痛みに襲われる度に“ピーン”と伸びてしまいました。

 

先生、もしくは吸引チューブを使って唾液を除去してくれている助手の女性は、僕の“ピーン”と伸びる手足を見て、『エッフェル塔みたい…』などと思っているのではないかと想像してしまい、なんだか恥ずかしくなってきました。

察してくれたのか先生は、また新たに麻酔を打ってくれたのでした…。

 

どうやら先生の予想通り、銀歯の中で虫歯が大分進行していたようです。

今日の治療はここまでで、次回は神経を抜く?処置をするようです。

 

人気の歯医者なのか、予約は最短でも2週間以上後になるようだし、次回の処置でも新しい被せ物をすることは出来ないそうです。

実は今回痛かった歯と対になる上の歯にも銀歯が被せられているのですが、どうもその歯も痛いことがあるので、どうせならこの期に全部治して貰いたいと思っているのですが、治療費もさることながら、完治するまで一体どれくらいの時間が掛かるのだろうかと気が遠くなっています。

僕が以前住んでいた幾つかの地域は、とにかく歯医者と美容室の数が多くて、きっとお客さんの獲得競争も熾烈だったのではないかと思うのですが、せめてその中の一店舗でも、この田舎に移転して来てくれないだろうかと願わずにはいられませんでした。

 

現在僕の歯には、真っ白のモルタルのような詰め物(簡単に取れてしまいそう)が施されているのですが、次回の予約まで時間が空くこともあってか、大量の痛み止めが処方されました。

「ジクロフェナク(ボルタレン)」という強い薬なので飲むのが少し怖いのですが、施術後から毎日飲んでしまっています。

早くこの不幸から脱したいと思っているし、一体銀歯の中のクリーニングはどのようにすれば良いのかと、途方に暮れています。

今僕の口内にある、小学生の頃に被せられたほかの銀歯たちも、そのうちに痛みだすのかと思うと、まるで時限爆弾を仕込まれたような気持ちになってしまいます。

人生をやり直せるとすれば、趣味はハミガキだといえるくらいに歯を大切にしたいと思います…。



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