30.図書館通いの大人たち

馴染みの図書館は3ヶ所あります。

最初の2年間くらいは一つの図書館に入り浸りでした。

一時この図書館は僕と同じような環境で暮らす大人が他に2人ほど利用しており、一度なんかは僕ら3人で縦にならんだ学習机を占拠してしまったこともありました。

それぞれがお互いのことを認知していたのかは分かりません。案外分かっていたのは僕だけだったのもしれませんが、今となっては確認のしようもありません。

一つだけハッキリとしているのは、少なくともその時点では誰もがお互いに興味を示すことはなかったということです。

物理的な距離として急接近したのは2年くらい前のその時期だけで、その後僕ら3人が一堂に会することはありませんでした。

僕は隣町にある、高速インターネットの使える“ハイエンド図書館”や、その後教えてもらった“精神と時の部屋”と名付けられた図書館の学習室へ流れましたし、他の2人はこの地にあまり居着かなくなっていったのです。

ただ僕がおもしろいなと思っているのは、そのように馴れ合いを良しとしなかった僕らそれぞれが今も独立独歩、オリジナルを求め現役だということです。

 

なぜこんなことを書いているのかというとそれは、いつもは先客なんていたことのない学習室に、今日は先客がいたからです。

図書館司書が珍しく渋い顔をしていると思ったら、それは学習室に先客がいると僕に伝えなくてはならなかったからでした。

一体誰がこの図書館の学習室を使っているのだろうか?

もし僕の小屋に電気が引かれていれば、これ程の頻度で図書館に通うことはありません。隣町のハイエンド図書館は学生が沢山来ますが、今日来たこの図書館の学習室は、学生どころかこれまでに先客がいたことすらなかったのです。

先客というのは案外、家に電気を引いていない彼らの内のどちらかかもしれません。

どちらかが先客としていた場合、僕はまたあの時のように知らない振りをするのだろうか?

それともこの2年の間に僕は何か変わっただろうか?

考えてみれば多少は(本当に多少だけど、)彼らの背中に近付くことが出来たと、数字に裏付けされた自信を得てしまっているのです。

今なら呆気無く話し掛けてしまえるかもしれないという、ある意味危なっかしい精神状態の自分がいました。

扉を開けた先にいるのは一体だれなのだろうか…?

 

ノックをして扉を開くとそこには知らない女性が一人、何やら忙しそうに電卓を叩いていました。

そうだ、僕も役所関係の書類をまとめなくてはならなかったんだと現実に戻ります。

今日も明日も、きっとその先もずっと、誰に何と言われようが自分の選んだ道を存分に楽しみ、ライバルたちに親近感をいだきながらも独立独歩、突き進んで行くことが出来そうです。

 

・朝摘みオレンジ:130円

【購入者:イギリス✕3、オーストラリア✕2】
【図書館】

【LED照明点灯時間:∞】







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