ストーブの煙突の中を「カタンッ…、カーン…」と繰り返し音を鳴らす何かに怯えていたのは、僕には次が無かったからです。
次が無いというのは、次は命がないということです。
アナフィラキシーショックといえば直ぐに分かってもらえると思うのですが、僕は子供の頃に一度蜂に刺されたことがあるので、次刺されたらアレルギー症状を引き起こし、死んでしまうかもしれません。
何故子供だったあの時、蜂を手掴みしてしまったのかと今でも後悔しています。
未だかつてあれ程の痛みがあっただろうかと思ってしまうくらいの激痛だったにもかかわらず、僕は泣きませんでした。
人前で泣くことだけは出来ないと思い込んでいたとはいえ、よく頑張ったと思います。
今にして思えば、この時が僕の人生の中で最も男らしかった瞬間だったのかもしれません。
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煙突の中で異音を発生させているのは蜂なのではないのかと僕は恐れていました。
ストーブ正面についている空気の取入口さえ閉めてしまえば小屋の中に蜂を解き放ってしまうようなシチュエーションは避けられるので、とりあえず閉めておくことにしました。
それからしばらくしても、相変わらず煙突の中からは異音が聞こえて来ます。そして遂にその音はストーブ本体にまで近づいて来ました。
耐火ガラスの覗き窓からライトを使って中を覗き込むと、小さな昆虫がライトの光に目掛けて体当たりして来ました。
小さなカナブンでした。
全身を灰で真っ白にしたカナブンが忍びなかったので、虫取り網を持ってきて捕まえ、外へ逃がしてやりました。
蜂かもしれないと思い込んでしまった為に、する必要のない緊張をしてしまったという話ですが、これに似た経験は会社や学校でも良くあると思います。
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僕は年に一度だけ、地元のお祭で出店をします。
古道具屋だったりチャイやコーヒー屋だったりするのですが、今年からはもう一箇所、出稼ぎ口を増やそうかと検討していました。
次の場所では物販やワークショップをやるつもりですが、もう応募の締め切りが間近だったので、重い腰を上げて本日、添付の写真をコンビニでプリントアウトしたり、商品説明や応募した切っ掛け、アピールポイントなどを書き、明日の送付に備えて準備をしていました。
出店料の他に、机や椅子のレンタル費用が掛かり、更に売上の数パーセントを支払わなくてはならない決まりがあります。
更にタープなどを準備しなくてはならないので、そこそこの投資になります。
厳しい世界ではありますが、年に一回二回のことであればゲーム感覚で楽しむことが出来そうです。
ここに出店を考える人というのは、少なくとも赤字にならない程度には売れるという自信があるということになるので、相当に狭き門になると思います。
サラリーマンがボーナスを貰うみたいに、僕も年に数回、このようなチャンスで大儲けが出来ないだろうかと今、妄想していました…。