ソーラーパネルの発電所と熊の巣を歩くプロデューサー

我が家の裏に、中規模のソーラーパネル発電所を作るというのですが、そんなスペースなんてあっただろうかと思い、散歩がてら見に行きました。

直線距離だと直ぐそこなのですが、原生林の中を歩くのは困難なので、ぐるっと迂回しなくてはなりませんでした。

発電所について:ゴディバを持った怪しい女|市長に電気を引いてもらいたい

 

こんなところに3、400枚のソーラーパネルを設置出来るのだろうかと思ってしまうくらい、その場所には草木が生い茂っていました。

しかし人間が本気で整地をするとなれば、ユンボなどの重機が入ることは間違いなく、そうなれば僅かな時間で更地のようになってしまうことを、この辺りの人々は知っています。

 

僕が移住する少し前に、すぐ近くで「牛」を飼おうとした地元の業者がいました。

しかしこの辺り一帯は別荘地です。

別荘に暮らす人々は、心穏やかに、静かに過ごしたいと願う人が多いようで、「牛」を飼うという話が出た途端、すぐにこれを阻止する為の署名活動が起こりました。

 

都会暮らしの人には分からないと思いますが、養豚場や養牛場の側というのは、とても臭うのです。

周囲に民家のない大きな牧場で飼うのであれば良いのですが、今回牛を飼いたいと言い出した土地の周囲には、別荘が密集していました。

 

別荘に暮らす人々の中に法律を学んだ人がいたことが大きく、地元業者も渋々「牛」を飼うことを諦めたのです。

 

ソーラーパネルの発電所が出来ると聞いた時に、すぐに件の養牛場のことを思い出しましたが、しかし牛の悪臭とはちがい、発電所の建設で懸念されるのは、パネルからの照り返しや、パワーコンディショナーの動作音などしかなく、これに直接被害を被りそうなのは、僅か軒数しかないのです。

 

山梨県はソーラーパネル発電に対する投資が盛んで、ちょっと車を走らせるだけでも、あちらこちらにソーラーパネルの発電所を見ることが出来ます。

 

空き家を取り壊してソーラーパネル。

農地転用をしてソーラーパネル。

 

大袈裟ではなく、ここ数年で驚くべき数の土地が、ソーラーパネルの発電所として活用されるようになりました。

空き家のまま放置するよりは、休耕地のまま放置するよりは、ソーラーパネルの発電所を作って売電する方が儲かると誰かが吹聴したのかもしれませんね。

 

もう大分下火になっていると思っていたソーラーパネルの発電事業ですが、ここ山梨県では、まるで最盛期のような勢いです。

 

こんな感じのところにソーラーパネルの発電所を作るとしたら、当然周囲の木だって伐採しなくてはならなくなるはずです。

都市化というよりは、ソーラーパネル化が進む田舎の未来像を描いているのは、一体どんな人なのでしょうか。



ぼんやりとしながら歩き続けていると、とある山の登山口に出てきてしまいました。

とても山登りなどしたくはなかったので、どこかで迂回しようと思いました。

 

曲がるべき角をことごとく反対に曲がったのでしょう…、気が付くと見覚えのない道を歩いていました。

 

十字路だったのですが、一つの道を残して全てが立ち入り禁止となっていた為、僕に選択肢はありませんでした。

 

登山道の入り口にもありましたが、どうやらこの辺りは「熊」が出没するエリアのようで、黄や赤地の立て看板が目立ちました。

なるほど、通りすがる人が皆無である訳だと妙に納得してしまいました。

 

正直に書きますと、僕は道に迷っていました。

山登りをしているわけではないので、「遭難」とは書き辛いのですが、内心ではまさに「遭難気分」を味わっていました。

心臓が早鐘を打ち、汗は吹き出しているのですが、身体の芯だけが妙に冷えているような感覚です。

たっぷり2時間くらい彷徨いましたが、ようやく開けた道に出ることが出来ました。

自販機がオアシスのように映りましたが、生憎お金を持ってはいませんでした。

 

『お財布携帯が欲しいな…。』

 

ぼんやりとそんなことを考えながら、暑くて脱いだニットを昭和時代のプロデューサーのように首から下げ、ヘトヘトになりながら歩き続けました。




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