雨降りは、親方とぼくのネコ曜日

子供の頃に思い描いた未来では、雨はスケジュール通りに降るものでした。しかし僕の予想は大きく外れてしまったので、現在も昔と大差なく、雨が降れば一日の予定を大きく変更しなくてはならないことがあります。

基本的に動物は濡れることをとても嫌います。野生動物は雨を弾く体毛を持っている場合が多いようですが、それでも雨の中を歩きまわればそのうちに身体は濡れていくし、体温だって低下し、疲弊します。

進化の過程で多くの体毛を喪った人間なので、より雨を嫌がったとしても不思議ではありません。

ちなみにですが、犬と違って猫の体毛は水を弾くようには進化しませんでした。雨の少ない砂漠地帯が出身だからだと読んだことがありますが、そんなことがあるために激しくお風呂を嫌うのかもしれません。

また、動物園のネコ科動物は、雨が降ると軒下から出てこないこともあるそうです。

かわいいですね。

 

なにが書きたかったのかというと、雨が降ろうが猛暑だろうが、仕事内容に変化のない人間社会は少し異常なのかもしれないということです。

室内で仕事が出来る人ならまだマシですが、たまにずぶ濡れになって道路工事をしたり、バイクで配達をしたりしている人をみると、厳しい世界だと思ってしまいます。

 

僕の場合、今は閑散期なので雨が降れば予定を容易く変更することができます。

今日は一日中小屋の中で漫画を読んだりインターネットをやって過ごしました。

 

雨の日の仕事のことを書いたので、若い頃にやったアルバイトのことを思い出しました。

それはいわゆる3Kと呼ばれるような現場仕事だったのですが、とても厳しかったとはいえ、親方は男らしいところのある人でした。

休憩時間の飲み物から昼ごはん、行き帰りの飲み物や、コンビニで買えるちょっとした食べ物なんかは全て親方がもってくれたし、怒っても長引くことなく、一番若手だった僕でも、真面目に頑張っていると思えば、内緒で給料を上げてくれることもありました。

いつもは4、5人編成で現場に向かうところ、その日はふた手に別れることになり、僕は親方と2人で片道3時間近く掛かる現場まで高速道路を飛ばすことになりました。

親方の家とは割合近かったので、朝は親方が僕をピックアップしてくれました。

現場作業というものは、基本的には朝の8時から始まります。休みは日曜日と祝日だけだし、日給月給といって、働いた日数分を月末にまとめてもらうというスタイルでした。

何社か合同で仕事をする場合は特に、どんなに遠くても朝8時の朝礼に間に合わせなくてはなりません。

僕と親方はまだ夜の明けきらないうちから車に乗って、遠くの現場に向かっていたのですが、どうもその日は空模様が芳しくありませんでした。

現場に着く頃には、割合しっかりとした雨が降り出していました。

当然僕はこの雨の中で仕事をするのは嫌だと思いましたが、なにせその日は親方と2人だけです。少なくとも他の職人さんと比べれば緊張します。

ネガティブな感情は表に出さないように気を付け、作業の準備に取り掛かかりました。

いつもは自分から率先して動く親方ですが、その日は遠くを眺めるばかりで気が乗らないという感じに見えました。

フラッと今日の作業箇所を見て回ったかと思うと、

「足場がダメだな、これじゃあ仕事にならないからもう帰っちゃおうぜ。」

 

こんなことは後にも先にもありませんでした。

僕らははるばる高速に乗ってやってきたというのに、到着して数十分後には同じ道を通って帰ってしまったのです。

 

その現場をみた僕には分かります。

親方は明らかに雨の中で仕事をするのが嫌だったのです。

帰りの車内で親方は、携帯電話で現場監督からこっぴどく叱られていたけど、「ちゃんと日給払うから心配すんな」と僕の顔を見てそういいました。

僕の心配は、日給のことだけではなかったことは言うまでもありません。

日中室内仕事でストレスをためている人には、身体を動かす現場仕事もたまには良いものだと感じたかもしれませんが、僕は若い頃に現場仕事やその他にも体力を使うキツいアルバイトをしたお陰で、より安定した仕事に就けるように頑張ることが出来たと思っています。

あ、今は小屋暮らしでしたね。

とはいえ、若い頃に沢山の職種を経験しておいたことはとてもよい思い出になっています。

親方は元気に働いているだろうか…?

おしまい。

【購入者:アメリカ人✕1】







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