寅壱の似合う男

先月行ったフリーマーケットで、恵比寿に店舗を構える洋服店のベストが500円だというので買いました。

ちなみに、「ベスト」「ジレ」「チョッキ」にも大した違いはありません。

 

呼び名を変えただけでオシャレ感が増したり見直されたりしてしまうのは滑稽ですが、確かな効果がある場合もあるので馬鹿には出来ません。

 

学生時代のアルバイト先には、コーデュロイは「コール天」、タートルネックは「とっくり」と呼べという古風な男の先輩がいました。

その時の僕はまだ十代だったので、そんな聞き慣れない言葉が逆に新鮮でした。冗談半分でそのように呼称して笑ったこともありましたが、いい大人になってしまった僕が今、「コール天」「とっくり」などと呼んでいたとしたら、今の若い人たちはどう思うだろうか?

 

こんなニュアンスの言葉遊びが通用しなくなったと感じた時、人は加齢に怯えだすのかもしれません。

 

アルバイト先の先輩は僕より4歳くらい年上でした。彼だって「コール天」「とっくり」世代ではなかったのです。

4つ年上だったけど、彼だってまだまだ若かったからこそ出来た言葉遊びだったのです。

先輩が本気で「コール天」「とっくり」と呼んでいるとは思わなかったので、僕は感覚的に、先輩を自分と同じ若者という輪の中に入れていました。

 

4つ上の先輩は今、恐らく「スパッツ」ではなく「レギンス」「ズボン」とは呼ばずに「パンツ」と、若者に迎合するような呼び方にシフトしているような気がします。

それは死語を冗談として使うことが出来なくなったと自覚するくらい、僕らは歳を取ったからです。

 

僕も知らず知らずのうちに、ジーパンではなく「デニム」と呼ぶようになったし、トレーナーは「スウェット」になりました。

言葉単体としては分かりにくくなっていますが、オシャレ感の前では論理的思考もしばしば屈服します。

僕は自分の加齢をどこかで恐れているのだと思います。

だから若い時にはなんとも思わなかった年寄りくさい言葉にだって敏感に反応してしまうのだと思います。

 

今日はなんだってこんなことを書き出してしまったのだろうか?

それは今日初めて外に着ていった冒頭のベストが、どうしたって現場作業者の憧れブランドである、「寅壱」のベストに見えてならなかったからです。

そろそろ僕も自分の年齢にあった洋服選びというものを考え出そうかと思わされた一日でした。

 

それにしても、「スパゲッティ」「パスタ」にしたり、「ホットケーキ」「パンケーキ」にするような、うっかり踏んでしまいそうなトラップを儲かるからと次々と仕掛けていかないでもらいたいと思います。

いや、企業のトラップなんかには目もくれなかった、自信に満ちあふれていた十代の頃のように、僕も少しは自分に自信を持って、呼びやすかったり慣れた呼び方が出来るような男になれるように頑張らなくてはならないと思います。

 

最近は早起きをして色々とやっていたので、そんなことを書こうと思ってパソコンを立ち上げるのですが、つい脱線してしまいます。

明日は車検関係ですが、TPでも更新を予定しています。

興味がありましたら是非。

 

おしまい。







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