7.1分で行ける名山

隣の農機具小屋の重機は大事にされていると思う。エンジンを掛けてから出発するまでの暖気時間がとても長いからだ。

浅い眠りの時は夢の中にエンジン音が染み入ってくるので、夢から現実へフェードアウト、フェードインするように切替えがスムーズ。それでもまだうだうだしていると、正午のチャイムが鳴って、寝ぼけた頭を引っ叩かれたような気持ちになる。

どんなに夜更かしをしても昼には自然と起きることが出来るので、ある意味助かっているのかもしれない。

今日明日と何をしようか考えたけど、お金がない時は「自然」と遊ぶのが上策だと思う。

都会からの人達が登りたいと集まってくる名山の麓に住んでいるので、その気になれば車で1分で登山口まで行くことが出来る。

この山へは一昨年の夏に頂上まで登ったのだけど、あと少しで下山って時に熊を2頭目撃してしまい、それ以来ジワジワと怖さが浸透してきたように思っている。

熊を目撃してから下山するまでは流石に怖かったけど、小さな固体が数十メートル先を2頭、縦に連なり走り去る姿だったので、怖さは直ぐに収まった。

普段は熊のことを気にすることはないけど、この山に入ることを想像する時だけは必ず付随して、目撃した2頭の熊が頭を過る。

2頭の小さな熊が凄く怖いということはないけれど、それでもやっぱり手ぶらで山に入るのは心細いと思ってしまう。

出来るだけ早く熊を目撃したところまで登り、このトラウマがまだ小さいうちに克服しておきたいと思った。

起きてから着替えをして直ぐに小屋を飛び出すと、思い立ってから30分後には山にいた。これが田舎に移住した醍醐味の1つだと思う。

冬の山は葉っぱが落ちて見通しが良いので、熊と出会い頭に…って心配は少ないと思う。

冬になっても冬眠しない「穴持たず」はいるとしても、それほど恐れることはないと思っている。

ツキノワグマは雑食だけど基本的には草食だというし、体型も小さく、子供の頃から飼えば、犬猫に負けないくらい人に懐き、愛嬌があるという。

それにとても臆病だというので、普通は人間の姿をみれば向こうから逃げていくらしい。

それでも怖くなったら統計に頼るのも良い。

年間を通し熊で死ぬ人間の数は数人程度らしい。

スズメバチで死亡する人数の30人と比べると、とても少ないことが分かる。

手ぶらで入山したので登るスピードは普段よりずっと早かったけど、高度が上がるに連れて地面には溶け切らない雪が増えてきたし、15時30頃には日が落ちかけていたので、少しだけ慌てて下山することにした。

冬の山は熊どころか、野生動物の鳴き声すら聞くことが出来なかった。

根元から折れた木々も多く、今は生命のサイクルの「死」のパートなのだろうと思った。

下山して思ったけど、やっぱり水くらいは持っていけば良かった。喉がカラカラだったので思わず帰りに「アクエリアス」を買ってしまった。

それに用意していた手袋を持っていくのを忘れ、仕方ないからポケットに両手を突っ込んで下山していたら枯れ葉で滑って転び、悔しかった。

ああ、熱々の風呂に入りたい。

・アクエリアス:118円

・購入者:アメリカ人×1

・LED照明点灯時間:2時間30分




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